「不慮の事故」とはどんな事故?

保険の約款に「不慮の事故による死亡に対して保険金を支払う」という取り決めがある場合、被保険者が事故で死亡しても、それが不慮の事故と認められなければ、保険金は支払われません。
ひとことで「不慮の事故」とは言いますが、では具体的に、どのような事故のことを指しているのでしょうか?そして、どんな事故で死亡すると、保険金が支払われないのでしょうか?
被保険者が遭遇した事故が不慮の事故であるかないか、その判断の基準となるのは「偶然性」、「急激性」、「外来性」の三つです。
(1)偶然性
その事故が、偶発的に起きたものだった場合、偶然性があると認められます。事故が、被保険者にとって予想のできないできごとであったかどうかの判断です。
したがって、自殺や自傷行為などによる事故は、予想ができなかったとは言えないため、偶然性があるとは認められません。また、過去の判例では医師のミスによる医療事故に関しても、偶然性は認められていません。
(2)急激性
その事故が切迫していて、避けようのないものであったならば、急激性があったと認められます。事故が急激に起こり、被保険者が回避する術もなく巻き込まれたのかどうかという判断です。
つまり、慢性的な病気や疲労、中毒などによる死亡は、急激性があるとは認められません。
(3)外来性
事故の原因が、被保険者の体内に無い場合、外来性があったと認められます。
被保険者の病気や体質などが原因となっている場合は、外来性があるとは認められません。ただし、事故の原因が外来性のあるものと、ないものの複数に及び、外来性の原因の方が重大だと認められた場合は、外来性があると判断されます。
これらの「偶然性」、「急激性」、「外来性」のすべてが認められた場合、その事故は不慮の事故だったと判断されます。
しかし、この三つの条件の内で「偶然性」を立証することは、難しいものです。
例として、Aさんが電車が迫るホームから足を踏み外して、命を落としてしまった場合を考えてみましょう。家族は、これを不慮の事故として保険会社に傷害特約(事故・災害時による死亡・障害に対して保障する特約)の保険金を請求します。
この事故では、Aさんが足を踏み外した時点で電車が迫ってきていたので、急激性が認められます。また、Aさんの疾病や体質が原因ではないので、外来性も認められます。
しかし、Aさんが転落した時に「他の人に押された」、「何かにつまづいた」というような目撃証言や、証拠などが出てこない限り、偶然性があったのかどうかは、Aさん以外の第三者には容易に知ることができません。
このような場合、もしAさんが経済的や心理的に困難な状況にあったり、急に保険に加入している、健康状態に不安があるといった状況があった場合、保険会社はこれを状況証拠として、偶然性のない自殺だったとして、保険金の支払いを拒否する可能性があります。
そして、これを争点にして、保険金を支払うかどうかの裁判に発展した場合、被保険者側はこの事故が偶然のものだったと主張して、それを立証しなければなりません。そして、偶然性があったという判決が出なければ、保険金を請求できなくなります。
この例では、保険会社は状況証拠から偶然性を否定しています。元々物的証拠がないところから始まっていますので、被保険者であるAさんの遺族が偶然性を立証するのは、極めて困難と言って良いでしょう。
このように、事故に「偶然性」、「急激性」、「外来性」が認められれば、その事故は不慮の事故と見なされますが、場合によっては偶然性を証明することがとても難しくなるのです。約款では「不慮の事故」の一語で済まされていても、その判定にはかなり微妙な線引きに関する問題があると言えるでしょう。
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